【第5話】トラックのマナー違反 ~ゴミ編~
トラックドライバーの事情を紹介する記事を書くと、世間から必ずといっていいほど聞こえてくるのが、
彼らはマナーが悪い
という声だ。
道路上において、このマナーというのは実に広義である。
その中でも、トラックドライバーがする路上駐車やエンジンの掛けっぱなし・ハンドルへの足上げなど、事情を知らない一般車や歩行者からは一様に
マナー違反だ
だからトラックドライバーは
と言われてしまう。
筆者はこうした声を、今までことごとく論破してきたつもりだ。
理由や事情を紹介しながら、トラックドライバーにはあなたたちの知らない事情があると、世間に伝え続けてきた。
しかし、こうした主張の中で唯一、どうしても世論の声に真っ向から深く噛みついて反論できないトラックドライバーのマナー違反がある。
ポイ捨てだ。
ポイ捨ては、
自分の部屋でもある車内は汚したくない
というワガママと、
すでに多くのゴミがポイ捨てされてある高架下などに手元のゴミを重ねても、清掃員が出動するという事実に変わりはない
という自分よがりの心理が合わさると、さほど罪悪感なく誰もができてしまう行為だ。
先述したように、道路上でのマナー違反とは、大変広義であるうえ、トラックドライバーのプロ意識には各人かなりの高低差があるため、トラッカー = マナーが悪いとひとくくりにされるとやはり、
それは違うだろう
と強い口調で世間に言いたくなるのだが、それとは裏腹に、トラックドライバーにはこのポイ捨てに対するマナー違反が目立つのも事実で、トラックドライバーに寄り沿って書いている筆者としては、
なんともバツが悪い
擁護しきれない
というのがネットニュースでは書けない本音だったりする。
私事で大変恐縮だが、筆者はその中でも特にゴミ問題やポイ捨てに対してはかなり潔癖かつ厳しく考えるところがあり、トラックドライバーに対するこうした不名誉な固定観念は、元きれい好きトラッカーとしてはプライドが許さず、近い将来なんとしてでも返上したい汚名であり、格好良く言ってしまえばトラック関連記事を書く意味の1つだったりもする。
では実際、トラックドライバーは一般ドライバーと比べてゴミに対するマナー違反者が多いのかというと、そんなこともない。
なのにどうしてトラックドライバーはポイ捨てするという印象を持たれるのかというと、トラッカーには、絶対的に道路の上やクルマの中にいる時間が一般ドライバーよりはるかに長くなるため、ポイ捨てする機会も必然的に多くなるという現状がベースにあるのだ。
そこに、時間に追われるトラックドライバーには避けられない車内での飲食という条件が加われば、出すゴミの量も一般ドライバーより多くなる。
そのため、ポイ捨て率が他社より上がるのは当然と言えば当然なのである。
いわずもがな、だからといってこうした行為を
はいそうですか
と笑って許せる隙は一切ないのだが、やはり筆者がトラックドライバーと接触したり観察したりしている中では、トラックドライバーがマナーが悪いと思われるのは、その人の数ではなく、マナーの悪い人がポイ捨てをする機会の多さに原因があるように感じる。
そんな中、クルマからのポイ捨てを阻止するべく、高架下に神社にあるような鳥居のミニチュア版を並べ、ポイ捨てを躊躇させようとする一部自治体までもが現れるなど、世間も街の環境を守るのに必死だ。
こうした神様まで使って対策せねばならないほどの原因の多くがトラックドライバーであると、少なからず世間に思われてしまっているならば、やはりここはトラッカー総出でこのイメージを変えよう、いや、
変えてやろうじゃないか
と、筆者はひとり躍起になっているところなのだが、どうだろう、現役トラッカー各位。
冗談などではなく、本気でトラックドライバーの存在価値を上げていく気はないだろうか。
世間から
だからトラックドライバーは
と後ろ指さされながら仕事をするより、
大変なのにマナーがいいな、トラックドライバーは
と言われたほうが、仕事のモチベーションもトラックドライバーとしてのプライドの在り様も違ってくるはずだ。
昨今、トラックドライバーの言われ方にはひどいものがある。
やれ、底辺職だ、いずれ自動運転車に消される職業だと。
筆者のゴールは、こうしたことを言う世間に
トラッカーになれるものならなってみろ
と言い返すことなのだが、再度聞こう。
どうだろう、現役トラッカー各位。
本気でトラッカーの存在価値を上げていく気はないだろうか。
橋本 愛喜(はしもと あいき)