【第8話】トラックドライバーの性格
職業柄、今まで多くの業界・業種の人たちと会い、様々な声を聞いてきたが、それでもやはりトラックドライバーほど人間臭い人たちはいないとつくづく感じる。
世間では、かつて一世を風靡した映画『トラック野郎』シリーズや、車内で足を上げて休憩しているドライバーの格好を見てか、トラックドライバーはイカついというだけの画一的なイメージを持たれることが多い。
が、筆者が今まで見聞き、経験した限りでは、彼らほど人間臭く、辛抱強く、愛情に溢れる集団はいないのである。
もちろんトラックドライバーの中にも、時折「なんだコイツ」という思いを沸き立たたせる人もいないでもない。
こういう人らがトラックドライバーの質やイメージを落としてしまっている
と感じる人も、正直いる。
が、現場やSNSなどで直接話を聞かせてくれるトラッカーたちは、そのほとんどが聞けば親身になって教えてくれるし、1つお願いすれば2つ返事で100応えてくれる。
オフィスワークや集団での仕事が苦手でトラックドライバーになったという人が少なくない中、彼らは皆、孤独を愛しながらも人に優しく、ゆえに熱いのだ。
卵が先かヒヨコが先かは分からないが、こうして孤独を愛する彼らトラックドライバーが人に優しく熱いのは、その過酷な労働環境が一因していると個人的には思っている。
世間的にトラックドライバーは、様々なところへ行けたり、人間にない速さとパワーを操ったり、人間関係のしがらみがないという(一部間違った)イメージから、自由でいいと思われることがあるが、運転中は、その想像とは裏腹に、体の自由がほとんど利かない。
何より辛いのは、運転中に立ち上がることができないことだ。
走り始めれば、同時に座りっぱなしも始まるわけで、ろくに背伸びもストレッチもできず、前の道路と差し迫る時間を相手に戦う。
そんな中、唯一自由に動かせるのが、脳と口。
さすれば、走行中にすることは考える・しゃべるが主となり、彼らはこの2つの自由を大いに活用するのだ。
ゆえに、彼らには、他の業種の人以上に色んなことを必死に考えている人が多い。
筆者も現役当時、本当に多くのことを考えた。
過去の思い出、家族や今後の自分自身のこと。
今こうして一本筋を通して執筆ができるのも、あの時多くのことを考えたおかげだと心から思っている。
余談になるが、こうして人知れず皆それぞれが様々なことを真剣に考えていることを知っているからこそ、時折耳にする「トラックドライバー=頭が悪い人がする仕事」という身勝手でくだらない世間の固定観念は、筆者自身、心底許せないのだ。
こうしてドライバーは、走行中に人に対する感謝を悟ったり、仕事論や信念を強くしたりすると、その結論や思いを、もう1つ残っている自由なパーツである「口」を使い、SNSなどで繋がった、顔すら見たことないどこかの同業者と互いに愚痴を言い合い、励まし合い、夢を語り合う。
結果、彼らは皆、孤独を愛しながらも人に優しく、熱くなり、仲間を思いやる意識も他の業界より高くなる。
所属業者・走っている地域・運んでいる荷物の違うどこかの同業者を励ます姿は、電車内の椅子を取り合うスーツ姿のサラリーマンにない、繋がりを強く感じるのだ。
時には、トラックドライバーを
底辺職だ
と揶揄する声を聞こえてくるかもしれない。
同窓会や飲み会などで馬鹿にされた経験を持っている方もいるかもしれない。
が、自分の仕事に誇りを持ち、信念を貫き通していれば、必ずその思いが実を結ぶ日がやってくる。
現役で走られているドライバーさんには是非、今後も仲間を大事に、プライドを保ちながら、ハンドルを握り続けてほしい。
そして、今後トラックドライバーになろうか躊躇している人は、不安がらずに是非どちらかの業者の門を叩き、この楽しさを味わってみてほしい。
橋本愛喜 (はしもと あいき)