腕を組む老人のアイキャッチ

【第7話】トラッカーの健康問題

筆者が現役でトラックに乗っていた当時、仲良くしてくれていた60代のおっちゃんドライバーがいた。
彼は、毎度同じ時間に某サービスエリアに行くと声を掛けてくれる複数のおっちゃんのうちの1人で、まあそれはそれはよくしゃべる人だった。

が、大変残念なことに彼には歯がほとんどなく、入れ歯も日々の手入れが面倒くさいとのことでしておらず。
ゆえに、毎度何言ってんのかほとんど分からず。
ただ、最後には自分で言ったことを自分で笑ってくれるので、筆者もそれに合わせるように最後に笑ってごまかしていた。

今まで取材や経験を通して出会ってきたトラックドライバーの中には、健康状態がおろそかな人、身体疲労を溜めた人が少なくない。
過酷な労働環境を強いられる彼らには、自身の体にまでに気を使う時間的・精神的余裕がないというのが現状なのだ。

 
 
狭い運転席に長時間同じ体勢で座り続けることが、健康にいいわけがない。
眠気覚ましにカフェインが多く入っているコーヒーやエナジードリンクを飲むことも多いし、トイレを我慢するために水分を極力取らないドライバーすらいる。

そんながんじがらめが長時間続いたと思えば、目的地では肉体労働が待っている。
ひとたび車外に出れば、今度は荷積み・荷降ろしで途端に休んでいた筋肉を使わされる。
ヘルニアなどの腰痛や指の骨の変形・手のひらのタコなどは、全国のトラックドライバーの職業病とも言えるだろう。

また、時間のない彼らは、短時間で食べられるコンビニ食やファストフード・ラーメンなどばかり摂取することで栄養が偏ったり、歯を磨く余裕をもてなかったりする。
そのまま仮眠してしまえば、前出のよくしゃべるおっちゃんのように、虫歯で歯を失うことになるのも珍しいことではない。
一度虫歯になると、定期的に歯医者に行く時間が取れず、重症化してしまうのだ。

さらに、わずかな時間の休憩などでは、寝過ごすことを避けるためにベッドスペースで体を休められず、ハンドルに足を上げて仮眠を取ることが常であり、それゆえトラックドライバーはエコノミークラス症候群の発症率が高いと言われている。

トラックと老人

筆者の周りに、1人運転中に体の不調に見舞われ、路肩に停車し、そのまま息を引き取ったドライバーがいる。
大型トラックをさせまいと、最後の力で路肩に止まったんだろう。発見された時、トラックのエンジンは掛けっぱなしだったという。

国の血液と称されるトラックドライバーは、今日も休むことなく日本の道路という名の血管をひたすら隅々まで流れ続けているのだが、その一方彼ら自身の本当の血管は過酷な労働環境によってボロボロになっていることが多い。

筆者は物流出身では決してないが、道路で知り合った当時のおっちゃんたちや、記事やSNSを通して応援してくださる読者の現状を見聞きすると、やはり彼らの労働環境は他業種よりもいいとは言えず、国や世論を巻き込んでもっと改善されるべきだと心から思う。

 
 
高齢化が進むトラックドライバー。

荷積み・荷降ろしで運動してるから大丈夫

と思っている現役トラッカー各位は、是非運動する時間、せめて休憩中にストレッチしたり、こまめな水分補給をするなどの対策を取ってほしい。
 あなたたちの活躍なしに、日本の経済は決して回らないのだから。

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