【第3話】トラックドライバーが取得すべき「作業用資格」TOP5
さまざまな荷物を運ぶトラックドライバーには、普通自動車免許はもちろん、より大きなトラックに乗るための中型自動車免許や大型自動車免許を取得している人がほとんどだ。
筆者も、工場での仕事を始めて間もなく、大型自動車一種免許を取得した。
世間が持つトラックドライバーの仕事のイメージは、これら中型以上の自動車免許を取ったうえで、”トラックを運転すること” というのが一般的で、なかには
そんなに大変じゃないだろう。
運転してればいいなんて羨ましい。
という声まで時折聞こえてくるのだが、実際のドライバーの業務はご存じの通りトラックの運転だけではない。
むしろ、送り届けるという意味では、現在ほとんどの現場でドライバーの仕事とされている荷積み・荷降ろしのほうが、本業だといえるだろう。
こうした荷積み・荷降ろし作業には、体力と技術の他にあるものが必要になる。
資格だ。
そこで今回、現役のトラックドライバーがどんな作業用資格を取得しているのかSNSでアンケートを実施して聞いてみたので、そちらの結果をランキング形式にして簡単に紹介・解説したい。
目次
トラックドライバーが取得すべき作業用資格 TOP5
【1位】フォークリフト
パレットに乗った荷物をまとめて積み降ろしでき、各倉庫などでも操作を求められることが多いため、このフォークリフト運転資格はトラックドライバーの中でも、最も取得保有率が高くなっている。
取得は原則満18歳から可能で、それ以外の細かな条件や受講時間は、保有している資格や業務経験によってまちまちだが、取得自体はそれほど難しくない。
時折、
私有地だから無資格で運転しても問題ない。
大型免許まで持っているんだからフォークは運転してもいい。
と誤解する方がいらっしゃるが、無資格での運転には重い罰則が科される。
ちなみに、トラックドライバーには要らぬ朗報ではあるが、この資格は自動車運転免許がなくても取得可能だ。
【2位】玉掛け
玉掛けとは、クレーンのフックに荷を掛けたり外したりする作業のことをいう。
こちらも誤解されやすいのだが、このクレーンのフックに荷を掛けたり外したりする作業というのは、クレーン資格のみではできないようになっているため、クレーン作業の必要な現場へ足を運ぶトラックドライバーは、現場に合ったクレーン資格と併せて、この玉掛資格の取得が必須となる。
講習では、つり上げに必要な用具の種類やその方法などのほか、クレーンに関する知識も学ぶ。
こちらも受講時間は現在の資格や業務経験によって変わってくるが、受講資格は、原則18歳以上であることのみ。
【3位】移動式クレーン
移動式クレーンは、荷をつり上げて水平に運搬することを目的として使われるクレーン。
主に車両に取り付けられているため、その名の通り移動が可能なのが特徴だ。
それゆえ、数あるクレーン資格の中でもトラックドライバーによる取得率が高い。
種類としては、トラッククレーン・ホイールクレーン・クローラクレーンなどが挙げられる。
受講には原則18歳以上という以外、特に条件はないが、この移動式クレーンの付いたトラックを運転するのには、もちろん車両に応じた自動車運転免許が必要になる。
つまり、この移動式クレーンのついたクルマを完全に1人で扱うには、運転免許・移動式クレーン・玉掛けが必要になってくる。
【4位】運行管理者
運行管理者は、トラックやバス・タクシーなどの営業用自動車が安全かつ円滑に運行できるよう、調整・管理するための資格。
安全運転する側ではなく、させる側の資格だが、この運行管理者を持っているドライバーが想像以上に多かった。
事業用の車両を所有する営業所には、この運転管理者を一定数以上置くことが国により義務付けられており、各々が物流業界のブレーン的存在として、日本の安全を陰で支える大事な役割を果たしている。
こちらは国が企業に科している法律であるため、取得条件は他資格よりも厳しく、
- 貨物運送事業での運行管理補助者の経験が1年以上あること
- 運行管理者基礎講習を修了している場合のどちらかに該当する者
または、
のみ、運行管理者試験を受験することができる。
昨今のトラックが絡む深刻な交通事故の増加に鑑みてか、この試験の難易度も若干高めで、現在の合格率はひと昔前の80%から20%へと大幅に低下している。
資格取得には受験以外にも方法はあるが、長期間の運行管理補助者としての経験と、その勤務記録などが必要となるため、かなりの時間と根気がいる。
【5位】床上操作式クレーン
工場で働く現場作業員の間では、クレーン資格の中でも最も取得率の高いものの1つだが、やはりトラックドライバーの間でも高かった。
床上操作式クレーンとは、床上(地面)から操作する、つり上げ荷重が5t以上のクレーンだ。
原則満18歳から受講可能で、その他の細かい条件や受講時間は、やはり現在の資格や業務経験によって変わってくる。
筆者が経営していた金型工場でもこの資格は必須だったのだが、このクレーンは、操縦者が移動する吊り荷について行かねばならず、吊り荷ばかりに気を取られていると、足元の障害物に気付かない場合があるため、操縦者自身の動線も確保する必要がある。
【番外編】溶接系
物流に直接関係なく、トラックドライバーの業務でも使われることはないのだが、ブルーカラー繋がりで取得している方、または工業系高校在学中、授業の一環で取得したという方が多かったのが、溶接系の資格だ。
溶接する物の種類や、溶接方法によって資格の内容も変わってくるが、今回ご回答くださったドライバーの中では、ガス溶接とアーク溶接保有者が目立った。
工場構内の多様化と資格の役割
こうした作業用資格を持っていると、就職や転職にはやはりプラスになる。
実際、筆者が経営していた工場で人材を採用する際は、これら資格の有無もしっかりチェックしていた。
会社から取得を強制されずとも勧められた場合は、面倒臭がらず、将来への投資だと思って積極的に受講に臨むことをお勧めする。
また余談だが、筆者が床上操作式クレーンと玉掛けの講習を受けた際、教室には50人ほどの受講生がいたのだが、筆者1人だけが女性で心細い思いをしたのを覚えている。
こうした講習は、大きな工場の一部を借りて行われることが多いのだが、筆者が受けた講習会場の工場構内にはさらに女子トイレもなく、当時の講師の方々には色々とご配慮いただき、今でも時々思い出しては感謝している。
時は流れ、昨今は工場にも多様性が求められる時代。
今後は性別だけでなく、年齢層や国籍もますますバラバラになっていくはずだ。
こうしたバラエティに富む現場の中、現場の知識の統一や底上げの役割を果たすのもまた資格だ。
これら資格の取得は、作業上のためだけでなく会社全体のスキルアップのためにもなるといえるだろう。
著者紹介
橋本 愛喜 (はしもと あいき)
フリーライター。
大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。
大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。
その傍ら日本語教育や主催したセミナーを通じ60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流。
滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を取り入れながら、多分野をハーバービジネスオンラインやIT mediaビジネスオンラインなどで執筆中。